22. 失恋
嬉しかった
この上なく
彼女は列車の
隅にいて
僕の為につくった弁当を食べていた
「こんなところにいたのかい」
ほっとして尋ねた
彼女は上目遣いに、黙って僕を見つめた
眼には涙を浮かべていた
彼女はちょっと笑みを浮かべ
首を左右に振った
どういうことだろう
「駄目なの」
「えっ」
「もう、駄目なの」
「なにが?」
「あなた…」
「…見ていたの」
「そう」
時が違うのに、彼女には僕が見えたのだろうか
「ごめん」
「いいえ、駄目よ、もう」
「何故?」
「…あなた、ときどき、ああしたことあったわよね…
あれ、ふざけてやっているのだと思っていた…
でも、違った――
あなた、そういう人たちのこと散々批判していたくせに、
本当は自分がへーこらへーこらしながら、
人に云われるがまま…
あなたが悪いと云っている人間そのものだった」
「…、
そうだよ僕はいきがっているだけさ、
それで悪びれてみていただけだよ」
「悲しかった、裏切られた感じ…、
私、そういうはっきりしない感じの人がいちばん嫌いなの」
「明日から…変えてみるよ」
「さようなら」
彼女は思いきり、満面の笑みを浮かべてみせた
僕は必死で、思いつく限りに弁解してみたけれど
彼女はどんどん消えていった
何もかも消えていく…
――裏切られた感じ――
最後に残った
彼女の涙もそう言葉を残して
消えた
ひとり
深夜の列車に取り残されて
自分自信も消えていった
列車の去った後には
レールだけが
闇のしじまへと
流れていた――
fin
(C)1999 篁 龍骨