1.序章
深夜の人びとを飲み込んで
地下鉄の最終列車は出発した
天井を連なる蛍光灯の
ひとつひとつ消えて
森閑としたプラットホームの
暗がりのなかへ僕は包まれてゆく
テールランプは
深いしじまの彼方へと融けて
残されたレールだけが
銀河鉄道のように
美しく流れている
プラットホームの端に腰をおろして
無限の源流を眺めみる
ふと、初夏の潮風が首筋を撫でて
背後から光の束が一閃し
トンネルの壁面に影の横顔が
幻燈のように大きく浮かび上がった
(C)1999 篁 龍骨