2.誕生日

「お客さん」
振り向くとそこにはタクシーが扉を開けて止っていた
「何しているの? はやく乗ったら」
車の中で僕への大きなプレゼントを抱えた女の子が
急かしていた
云うがまま、そのタクシーの後席へと体をすべり込ませた
「あなたにまだ他にもプレゼントがあるのよ」
運転手が
「今日、誕生日なんですか」
すると女の子が
「ええ、二人とも同じ誕生日なんです」
「へえ、それはそれは…」
彼女も同じ誕生日!?
知らなかった僕は
「ねえ、君も今日、誕生日だったの?」
「そうよ」
「僕…、何もあげていなかったね」
「いいのよ」
「よくないじゃないか――運転手さん! 一寸、そこで止めて」
タクシーは停車した
看板の無い、こじんまりした店がそこにあった
僕は車を跳び降りて
「ちょっと、待っていて!」
プレゼントを買いにいった
店の中にはいろいろなものがあったけれど
ひとつ…
きらきらと光る人形があった
何故だか、その人形に心惹かれた
「これ、いくらかな?」
「誕生日のプレゼントでしょうか?」
「ええ、今日、僕と彼女の誕生日なのです!」
「まあ」
「包んで下さい」
「もちろん」
「おいくらですか?」
「お金はいりません」
「え?」
何だか不思議だけれど、プレゼントを持ってタクシーに乗り込んだ
彼女にそれを見せて
「ハッピー・バースデー!!」
女の子は僕に抱きついた
運転手は“パーン”と一声、クラクションを鳴らした


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(C)1999 篁 龍骨