19. こんな自分
誰だろう、こんなところで
あれっ
この前に出た芝居の打ち上げだ
なんでこんなところで…!?
僕は
「一寸いってくる」
と、彼女に告げた
彼女は「行かないで」という顔をして
僕の袖を掴んだ
「挨拶するだけだから」
僕は離れた
後ろでは彼女を囲んでまだ騒いでいる
「すみません、挨拶無しで」
僕は演出家のところへ行った
「いや、いいよ…それより、何していたんだ」
「いえ、僕の誕生日でしたから」
「そうか、おまえ今日が誕生日か」
打ち上げの会場は騒めいた
あれっ、一寸、寒いぞ
冬? もしくは秋なのか
僕の誕生日は五月
しまった! 時が狂った
向こうと、ここでは時間が違う
「いえ…、今日が誕生日というのはうそです」
すると演出家は振り返り
「何っ! うそなのか?」
と、返事がかえった
「今、おまえの為にビールを追加したぞ…しょうがない、飲んでいけ」
「はあ」
僕は応えた
演出家は話題を変えた
「何で次から出演できないんだ?」
「えっ、あ、受験がありますので」
「受験!? 何でおまえは受験なんて下らない社会の波に流されるんだ…
こっちの方が余程大切なのに…まあ、いいけどな」
「はい、まだ勉強したいのです」
「そりゃ、いいことだ」
「もし他の機会がありましたら、そちらで出させていただきますから…」
「あ、そうか」
「いつ頃でしょうか」
「二月だ」
受験の真只中だ
「あ、それ駄目です、受験期間でないときでないと…」
すると演出家は怒って机を叩いた
「出れるのか、出れないのか、どっちなんだ!」
酔っている!
まずい
そう思った
「…出れません――とにかく受験が終わらないことには…」
「まったく、おまえはいつも物事に言い訳を云う!
受験だろうとどうだろうと俺には関係ない!
屁理屈こねていると怒るぞ!」
悔しい
なんでこう云われなければならないのか
未熟だからか
人にはこんなところ
見せたくない
「おまえ、性格を変えろ、性格をだ! だから役もロクにできんのだ」
きた…
僕は仕方がなく
「すみません」
と云った
帰ろうとすると
「おい、もう帰るのか」
「はい」
「そうか、じゃあな」
あっさり帰された
普段は立派な人なのに
こんなとき酒の存在を恨む
ああ、
こんなに罵られ
へいこらへいこらして
こんな姿は
見せたくない!
(C)1999 篁 龍骨